認知症の奥さんと介護するご主人、そして見守る私

N.Tさん(ご主人)N.Mさん(ご本人)

ご主人:最近イライラすることは、夜なかなかお風呂に入ってくれないこと。お風呂を沸かして、さあ、お風呂だよ、といっても、だめ。
Mさん:そうそう、夕食後だからね。すぐには入れない。
ご主人:その調子で、7時になっても夕食後、8時になっても夕食後。
Mさん:9時になってやっと私はいるのよね。
ご主人:9時になって立ち上がり、ゆっくり用意して、ゆっくり入って、寝るのは11時。
Mさん:11時に、寝る習慣なのよね。
ご主人:それはいいけれど、今度は仕事をして帰ってきた息子に僕が叱られるんです。もっと早くお風呂に入れてあげないとかわいそうって。
Mさん:それはかわいそうね、わたしではなくてあなたの方が。
ご主人:そこで僕は、考えたことがあるんです。
私:ぜひ聞かせてください。
ご主人:夜一緒に見ていた8時からのテレビを録画する事にしたんです。
「録画したから、明日見ようね。」といって、8時にテレビを消すことに決めました。
Mさん:それなら私、自動的に8時にお風呂に入ることになるわね。
私:ご主人、奥様に合わせていいことかんがえましたね。
ご主人:そうそう、最近はみそ汁を作るようになりましたよ。僕は見守っているだけです。
Mさん:何いってるの、私、みそ汁位ずっと作っているじゃない。
ご主人:そうだよね、昨日はカボチャも煮てくれたよね。
Mさん:私、ずっとお料理してきたじゃない、だってあなた、仕事一筋で何にもできないんだもの。
ご主人:君は忘れてしまっていると思うけれど、君が一番調子が悪かった時、5,6年前かな?僕は料理教室に行って、ぶりの照り焼きや、味噌汁を作っていたよ。
Mさん:そんなはず、ないわよ。私がずっと作ってきたわよ。
ご主人:こうなんだよな。僕の努力、すっかり忘れてる。まあ、いってもせんない事だから、いわないけれどね。
Mさん:私、あなたがあなたの両親を九州から呼び寄せるといった時も、一生懸命お世話したわ。
私自分のことよりもあなたの両親の事を優先してきたのよ。
私:ご主人も、息子さんたちも、そのことはよくわかっていらっしゃいますよ。
ご主人:(にっこり笑っているのみ)