認知症Aさん 80代女性 家族と同居
「物忘れが我ながらひどい。
毎日自分の頭をひっぱたいている。」
「なんだか自分でもやんなっちゃう。
もやもやで、夜中も気配を感じると起きちゃう。
夕方と朝の時間帯、太陽の上がり加減は、普通だったら感じるけれど、そういうときにはわからなくなって、夜中に雨戸を開けたり着替えたりしちゃうらしい。
疲れたりすると途端にボケる。」
Aさん宅の会話
お嫁さん「やかんがピーピー鳴る音がうるさくて仕方がない。
下の母の部屋に降りてみると、ガス台の前で立って見ている。
つい『うるさい』といってしまう。」
Aさん「やかんの音はチャンチャン鳴る。私にとっては悪くない音。完全に沸騰しても、もう少し沸かし続ける。」
お嫁さん「毎日ピーピー聞かされる側に立ってよ。」
Aさん「お茶とコーヒーを入れるのは毎日私の仕事だったのよ…」
Aさん「この頃頭がぼけていく。
お嫁さん「この1カ月、大失敗はないわよ。」
Aさん「なんでかなあ、と理屈がわからない。
わからないことが増えて、死んだ方がいいと思うけれど、
死ねないから生きている。自分で死ぬのはおっかない。」
お嫁さん「最近おかあさん、独り言が増えた。
テレビを見て笑っているのかと思って来てみると、1人でしゃべって1人で笑っている。」
Aさん「自分でしゃべって答えるのも自分だから、何をしゃべっても責任がない。
外(デイサービス)では気楽に過ごせるわけがない。
だから、家で1人しゃべりしている。」