在宅医療とは—在宅医療についての医師としての思い

在宅医療とは?

「在宅医療」という言葉になじみのない方も多いかもしれません。

病院には治療のために入院します。しかし、治療がおわって退院となっても、必ずしも元気に誰の手も借りず生活できるとは限りません。治療を続けることと生活の手助けを受けることが必要なケースは非常に多いのです。

特に一人で病院に通うことが困難な場合は自宅で必要な医療を受けられます。それが在宅医療です。在宅医療では定期的に医師が自宅を訪問します。急な病状変化の時は往診を行います。在宅療養では看護師の力が必要なことが多々あります。訪問看護という制度を使います。訪問看護師は患者さんの身体状況をチェックするとともに医師の指示のもといろいろな医療や介護を提供します。

在宅医療は入院と完全に同じ医療を家で提供するものではありません。自宅または施設で営む日常生活の中で医療を行うことが目的です。

 

在宅医療を受ける患者さんは様々です。大きく分けて次の2つのケースにわかれます。1)積極的な治療を自宅でできる限り行う。2)救命、延命のための高度な治療ではなく、その人の日常に沿った必要な医療をおこなう。

1)のケースは自宅で人工呼吸器を使うなどのケースです。しかし、多くは2)のケースとなります。認知症やがんの終末期の方が多いからです。2)のケースではその方の生命の流れを早めたり、逆に遅らせることはありません。その方の生命の流れどおりに、苦しくなく、少しでも快適に、住み慣れた場所で日常生活を送ることが治療の目的になるのです。